彼はそう言うと煙草を灰皿の底でもみ消してこちらの返事を待った。
反論されようものなら、素早いタイプで説得してやろうとディスプレイに集中しているのだ。
「無理じゃない?逃げられるよ」
「そんなことねぇよ、やれるって」
いつものように根拠の無い自信である。
「前はドラゴン連れっていったから楽だったけど、今の俺たちじゃ厳しいよ。」
これは確かな記憶だった。
SAKURAシャードでのプレイ時代に一度、ろくに攻撃をヒットさせられずウサギを見失った覚えがある。
そして二人してテイマーキャラを出してドラゴン2匹を使うことで楽に倒せることがわかったのである。今はMUGEN。WestboyもAKAGIもテイマーではない。また最初と同じ過ちを繰り返すつもりなのか。
「きっとやれるよ。失敗しても何度も挑戦しようよ。棘はたくさんもってるんだから」
そうきたか。
何度もやれるからやってみて損はない、と。
反論しようもない。
(ほえ面かくなよ)
そっと心で毒づいた。

二人はスカラブレイ近くの畑に行き、ヴォーパルバニーを出現させた。
ヤッホーイとばかりに逃げるウサギ。
速すぎてターゲットウィンドウを出せない。
とりあえず戦闘モードでWクリックし、近づいて斬ることは出来た。
ctrl+shiftでなんとかターゲットを出したと思ったのも束の間、サーバー境界をまたがれて、ターゲットが消える。

再びなんとかターゲットを出して攻撃を続ける。
やりにくい。
だが着実にダメージは与えていっている。
Westboyの魔法もあたっている。
あと一息。
ウサギのHPバーは真っ赤だった。あと1回か2回か攻撃がヒットすれば倒せるだろう
ほら、やれるじゃないか。
そう言っているWestboyの姿を想像した。
確かにWestboyの言う通りだった、やればできるもんだ、と認めざるを得ない自分がそこにはいるだろうと想像する。
気に入らなかった。
だがその瞬間はもう間もなく訪れる。
海岸沿いぎりぎりの場所で、AKAGIの一撃が入った!
ウサギの血があたりに飛び散り、ターゲットウィンドウが消えた。
倒したのだ。
よっしゃーー
と喜ぶWestboy。
しかし次の瞬間、死体が無いことに気づく。
妙なメッセージが出ていることにも。

なんと逃げられてしまったようだ。
制限時間なのか、追い詰められると逃げるのか
どちらにしろ死体は無い。倒せなかったことになる。
想像とは逆の展開になった。
「やっぱり無理なんだよ」
俺はどこか誇らしげな調子で言い放った。
Westboyは「でも結構いけるじゃん」と即座に反論した。
その通りだ。
運が悪くなければ今のは倒せた。
結果として倒せなかったものの、倒せそうではある。
ウサギはやれるのかやれないのか
この問題についてどちらの主張が正しいのか、
暗に戦っていた我々は引き分けのような形で決着した。
決着したとなれば
こちらとしても積極的に解決策を見出すのみ。
柵に囲まれたところでやろう。
ウサギがちょろちょろ逃げないように。
そういう結論になり、ムーングロウへ。
あのコットン畑に行くことにした。

今度は簡単だった。
ウサギはすぐに端に追い詰められた。
さらにエナジーフィールドで逃げ場を狭める。
EVとAKAGIが挟む。
ほぼ静止状態でどんどん体力が削られていくウサギ。
これが先ほど元気に逃げ回っていた動物と同じなのか、
そう疑うほどあっさりとウサギは絶命した。

死体からはスタチュー等が取れた。
以前これを集めていたことがあったなと思い出す。
もう1匹狩る。
これもあっさりと倒す。
人って不思議だよね。
手が届かないものは欲しくなるのに
価値が同じでもすぐ手に入るものは飽きてしまうんだ。
何がいいたいのかって?
うん
ウサギ飽きた。

